2008年12月3日水曜日

信じられない!

また文春の記事です。

11月号に「新・官僚亡国論ーー陸軍と霞ヶ関エリートの失敗」というのがありました。この前の「東京裁判」の続きみたいな記事です。著者は保坂正康という人で、「東京裁判」の座談会にも参加していました。最近の日本の官僚が起こしている一連のスキャンダル(年金記録漏れ不祥事、後期高齢者医療制度、事故米、防衛庁高官の収賄事件など)が昭和前期(終戦に至るまで)の軍部官僚の姿勢と非常に似たところがあると感じて、3人のその道の専門家(高橋洋一・元内閣参事官、佐藤優・起訴休職外務事務官、岩瀬達哉・年金業務社会保険庁監視等委員会委員)に話を聞いてまとめたものです。お役人はどこでも現実離れしているらしいけど、これはひどい。日本、大丈夫?という感じでした。

一番すごい発言、と思ったのは、五千万人の年金記録漏れが社会問題になっている時に、ある社保庁の官僚曰く「記録問題はいずれ片付くのだから、ガタガタ騒ぐことじゃないよ」と言うので、どういうことか訪ねると、「だって人は死ぬじゃないの」。信じられない!この人まだ社保庁で仕事してるみたいです。

で、思ったのは、こんな発言をスウェーデンでお役人がしたら、どんな結果になるか、です。先ずジャーナリストが黙っていないでしょう。テレビ、ラジオ、新聞で本人も社保庁も徹底的に叩かれると思いますが。スウェーデンも随分甘っちょろいところあるけど、官僚がここまで現実離れしているでしょうか。

そして当時の大本営の発表が戦争が進むに連れて次のようになった、これは今の官僚にもいえること だと言っています。

1.勝っている時は事実を伝える。
2.不利になると事実の表現をゆがめる。
3.事実と異なる表現になる。
4.全くの虚偽の情報を伝える。
5.嘘をつく。
6.沈黙する。

うーん、恐いですね。仕事なんかで、いよいよやばい、となったら普通の人でもやるかもしれないけど、このチャートに従って、最後までジタバタする人は普通は破綻する。でも軍人や官僚は権力を握っているから破綻しないところが恐ろしいと思いました。


エリートというのはいつも自分は正しいという発想があるから、自分の行為に責任を感じない。最近一部解禁になった東京裁判のファイルで見つけられた東条英機の日記風感想文の中で「もろくも敵の脅威に脅え簡単に手を挙ぐるに至るがごとき国政指導者及国民の無気魂なりとは夢想だにせざりしところ」こんなやつ等のために自分は戦争指導にあたっていたのである、的なことが書いてあるという。
この御前会議で会議では天皇が最終決断を下したはずですよね。

似たようなことは今でも行われているそうです。上記の年金記録漏れが発覚した時に当時の安部首相は精査するよう指示を出したにもかかわらず、何もやらなかった。総理の言うことを聞いても将来(何年か先)のメリットにはならないからだそうです。
そういった話が例を挙げて、一杯出てくる。くらーい気持ちになりました。

最後に著者は、三氏との対話を終えて、戦後、私たちは官僚について大いなる錯覚をしていたのではないか、と思い至った、と書いています。つまり官僚は「国民に奉仕すべきだ」とか「常に国益を第一に考えるべきだ」とか「無謬であるべきだ」というような「こうあるべきだ」観念で彼等の性格を変えようとしても効果は上がらない。むしろ官僚は「間違える」もの、「個人の利益を追求する」ものなのだという前提に立って、その無能力や無責任をひとつひとつ突きつけていくことだ。それによって官僚機関に国民の利益となる政策を実施させる仕組みを、改めて作り上げなければならない。と結論を出しています。

確かにビジネスの世界ではそんなこと常識なのに、政治家や官僚は「国民のためにあるもの」と思って気を許してしまうのですね。本当はいつも気を抜かずに見張っていなければならないという事でしょうか。

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