2008年10月9日木曜日

Sven の今日

スヴェンがこのところ夜中じゅうコンピュータの前に座って楽譜を書いています。
何をやっているのか紹介します。
下の写真はレーゲンスブルクの市立図書館にある楽譜集オリジナル最初の2ページのコピーです。
1555年にヘッセン兄弟によって出版されたダンス曲集のテナーの部です。

昔はスコアは作らなかったのだそうです。この曲集は5声部のもので、5冊のパート譜に分かれています。何部印刷されたかは分かりませんが、今のところ知られているのは、レーゲンスブルクの図書館にワンセット保存されているだけです。ところがこのセットはディスカント(ソプラノ)の部が紛失しているのです。
16世紀半ばの音楽というのはディスカント(最上部声)かテナー(第3部声)にカントス・フィルムス(メロディー)が置かれているそうです。この曲集は2部に分かれていて第一部は322曲、第2部には155曲、全部で477曲が収録されています。いわばダンス曲集の宝庫のようなものなのですが、多くがロディーが欠けていることから、演奏不可能だったのです。
今スヴェンがやっているのは、この曲集を再生させることです。
この時代の作曲/編曲法は先ず最上部か第3部にメロディーを置き、次に各部声を独立に作曲していくのだそうです。例えば一番トップにメロディーが置いてあるとすると、次はテナー、それからバス、アルトをそれぞれ作っていって、最後にヴァガンスと呼ばれるものを足します。ヴァガンスはどの部声と決まっているのでなく、最後の締めくくりに当たるので、高かったり低かったり、あちこちに現れるのだそうです。
このような構造になっているので、現在紛失している声部を再生するのは言ってみれば探偵が現場に残された証拠を集めて犯人を推察するような仕事になります。何年も前にはじめたことで、今、400曲近くを作り上げたらしいです。
完成を見た曲はその週のコンヴィヴィウムの練習で試され、仲間の意見を聞きながら、直したりします。私も時々、「これはなんのダンスだと思う?」などと聞かれたりしています。
恐ろしく根気の要る仕事をしているのだけど、本人は楽しくてしかたがないみたいです。

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